こよみのよぶね、冬至の夜

あなたの過ごした十二か月はどんな毎日でしたか?


和紙と竹で作られた巨大な行灯を冬至の夜に長良川に流し、過ぎゆく一年に想いをはせる「こよみのよぶね」。幻想的な光景はなめらかに黒く光る長良川に映り、溶け込んでいく。




12月22日、早朝の長良川に集まる人々。

夜に迫った「こよみのよぶね」に向けての準備が始められました。

前日の間に集められていた行灯たちをひとつずつ川のそばまで運び出す作業から始まった朝。各チームの想いが込められ丁寧に作られた行灯を、壊さないようにそっと移動させていきました。その後は行灯の取り付け。庭師を生業とする職人チームを中心に、船の上に行灯をしっかりと固定していきます。これまで横に倒れた状態でしか見てこなかった行灯が船上にそびえ立つと、その迫力にわっと歓声が上がりました。
1から12までの数字の行灯計15灯と、干支をかたどった行灯で合わせて16灯。パイプと紐でしっかりと船上にくくりつけられていきます。多くの人たちの協力によりスムーズに進んでいく作業。同時に、船の脇に灯す「豆提灯」の修復作業も行いました。例年同じものを使用しているためところどころ和紙が破れている豆提灯を、行灯制作で残った和紙を使いパッチワークのように貼り直していきます。
午後からは引き続きの作業と、あかりを灯すための配線をつないでいく作業。それに加え、和紙による衣装作りが進められました。これは、「こよみっけ」と呼ばれる一年の振り返りや願い事を書いた和紙を引き渡す式のためのもの。巫女のおつきの者たちが着る衣装を、和紙で制作しました。
それぞれの作業が終わるころには徐々に日も落ち始め、長良川はこよみのよぶねを楽しみに訪れた人で溢れてきました。鵜飼乗り場に行灯を載せた船が集結し、夕闇が訪れるころ。こよみのよぶね総合プロデューサーである日比野克彦さんのカウントダウンで、行灯が点灯されました。
行灯の点灯後、多くの人がよぶねの様子を楽しそうに眺める中、ひとり船上に上がるのは職人チームの親方。最後の最後まで、行灯の角度を調整し、よりよぶねが美しく見えるよう手を加えている姿が印象的でした。
夜が深まるにつれてぽつりぽつりと雨が。
雨空のもとで傘を差す人びとが見守る中、いよいよ出船。長良橋をくぐり、長良川の真ん中へとよぶねが並びました。干支である猪をかたどった行灯を乗せた干支船を先頭に、1月、2月、3月…と進んでいきます。雨に濡れた長良川にずらりと並んだよぶねは、圧巻の美しさ。なめらかな黒い水面に行灯のあかりが映る姿も、より幻想的な雰囲気を出します。冬至ならではの身に染みる寒さに加え雨冷えのする夜ですが、堤防には多くの人が集まりよぶねの浮かぶ光景を見つめていました。
チームおかってとして制作した4月の行灯。テーマは「平成の終わりと令和の始まり」でした。一時代の終わり、そして時代が変化するうねりを力強い赤と青の色で表現しました。実はこの行灯には裏テーマも。4月15日に起きたノートルダム大聖堂の火災。燃え上がる炎は人類の宝を焼き尽くしました。しかし、終わりがあるから始まりがあるように、破壊があるから再生があるとの想いを込め、炎のようなグラデーションの色を行灯にのせていきました。
さまざまな、それぞれの、想いが込められた行灯を載せたよぶねが時をなぞるように順番に長良川下流へと下っていくとこよみのよぶねも終盤。あかりを落とし、船から行灯が岸へと下ろされた後は、解体作業が行われます。骨組みの竹から和紙をはがし、すっかり解体してしまうまでがこよみのよぶねです。終わりは始まりのしるし。冬至の夜が過ぎれば、また少しずつ日が延びていき次の季節へと時が流れていきます。
この冬至の夜まで長かったような、あっという間だったような。川の流れに乗るよぶねと共に今年一年に思いをはせ、僅かに残る2019年を大切にしたい気持ちになりました。今年あったすべてのことに感謝しつつ、今年のおかって記事は締めくくりにします。

コミュニティハウス おかって

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