人との繋がりを撚る、食堂こより
食べることは、ただお腹を満たすだけのものなのだろうか。
どこにいても手軽に食事を済ませることのできる現代。コンビニは24時間空いているし、ボタンを押せばお寿司は回転せずにシューッと届き、ウーバーイーツでピザ以外の食べ物も注文できる。私たちはいつだって手軽に美味しいものを食べられるようになりました。
そんな時代に、“外食”の価値を改めて感じることのできるすてきなお店が川原町にあります。
2019年6月にオープンした「食堂こより」。
岐阜駅にほど近い「楮」で16年もの修行を積んだ杉山さんによるお店です。
町家の趣を残した店内には、13時というお昼をすこし過ぎた時間にも様々なお客さまで賑わいを見せていました。観光や散策のついで、ささやかなお祝いなど、ふらりと気軽に和食を楽しんでもらえるようなお店を目指すこより。そのイメージ通り、お店は上品さをたたえながらも温かみのある空気感と柔らかな接客が印象的です。
開放的な厨房で作られる料理は、顔の見える生産者さんによる季節の食材を使用。料理に合わせて買い付けをされたうつわに繊細に盛り付けがされ、運ばれてきます。どれも、からだの隅々まで染み渡るような優しい味わい。こころまで穏やかになる美味しさをゆっくりと楽しみました。
「どんな言葉よりも、料理を口にした瞬間、店を出る瞬間の表情がリアルで、大切。」と語る杉山さん。楮で鍛え抜いた腕が光る料理の品々は、見た目も味も素晴らしいもの。ランチは1200円からという高すぎない価格に少し驚いてしまうほどです。そんな杉山さんには、「味」以上に大切にしていることがあります。
お店の名前である、“こより”とは、紙を撚り合わせることで生み出される紐のこと。小さな紙でも、繋がることで大きな強度を持ちます。そんなこよりのように、人と人とが繋がり、新たなわくわくが生まれるようにとの願いが込められた店名。料理の質はもちろんのこと、それ以上に「間」を大切にした接客を心がけることで、人との繋がりが感じられる場にしたいとの想いがあります。居心地のよさは、細やかな気配りが散りばめられた空間だからこそ。単なる食事、単なる外食では感じることのできない、満足感がそこにはあります。
お店にいて気がついたのは、食事を終えた方やお店を後にする方たちが、揃っていい表情をしていること。どの方もほころんだ顔で「美味しかった」の言葉を杉山さんにかけつつ、満たされた表情で帰っていきます。
お腹だけでなく、こころまで満たされる食事。それこそがわざわざ足を運びたくなる理由になります。どこでも、何でも、食べられる時代だからこそ、食堂こよりで外食ならではの楽しさを改めて感じました。
食堂こより
11:30-13:30
18:00-21:00
火曜定休 夜不定休
〒500-8008 岐阜県岐阜市玉井町36−1
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